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2016年06月03日

男は子育てに必要か?【鼎談 上野千鶴子×東小雪&増原裕子 <後編> 】

提供元: ダ・ヴィンチニュース

特別鼎談 上野千鶴子×東小雪&増原裕子「産む」「産まない」は私が決めて何が悪い!

特別鼎談 上野千鶴子×東小雪&増原裕子「産む」「産まない」は私が決めて何が悪い!

その3:男は子育てに必要か不要か?

女どうしで子どもを産むことにしました
さきごろコミックエッセイ『女どうしで子どもを産むことにしました』を出した東さんと増原さん。レズビアンカップルへの社会的偏見を超えて妊娠をめざす彼女たちの挑戦は、あらためて「妊娠・出産」に対する女の自覚——―産む・産まないの決定は誰がするのか?——―を問い直す。このたび、出版記念としてそんなお二人が、尊敬する「ヘテロセクシュアルで結婚・出産経験なし」の上野千鶴子先生と鼎談。その3は「日本に父はいない!」との上野先生の断言からスタート。その真意とは?

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■日本に「父」はいない!

上野:私ね、あなたたちの本が男社会に対してものすごく強烈な「男いらず」を突きつけるような衝撃力のあるものになってほしいと思ってるの。なんといっても日本の男は親であることから逃げてきたから。45年前のリブの時、「産む産まないは女の自由」といったら、男から「オレたちはどうなるんだ」って反論があった。だから、「あんたたち、いらない」って言ったわけ。そうしたらいきりたってね。当時から子育ての現場は父親不在の母子家庭状態。ストレスになるだけなら、いないほうがましって。でも、あなたたちは父親を排除するわけではないのよね。

増原:排除していないです。むしろ、親戚のおじさん、みたいなスタンスで、どうやったら男性と一緒にゆるく家族を拡大できるか考えてるんです。

上野:それって、すごく大事な実験!生物学的父親が、ファミリーフレンドのひとりになるってことなのね。リブの時も、母親の性的パートナーであったりなかったりする男たちが、ファミリーフレンドとして出入りする子育て共同体のようなコミュニティを作ったこともあるのよ。でも当時は理念先行の原理主義だったから、いろいろ問題も多かった。「ここ(共同体内)ではみんなが母」ということにしてたから、子供が喧嘩して「ママー」って泣きついたりしてきたら「個別的母子関係を克服していない!」って批判されたり。

東:ええー。子供がかわいそう。

上野:世界にはいろんな共同子育ての実験がある。でも、たとえキブツ(イスラエルの共同体)のようなところで、みんなが同じように「マザー」ということになっていたとしても、子供は自分の母親を区別するということがはっきりわかった。個別性を無視した共同子育てはどれも失敗しているのよ。それにしても、本当に人類はたくさん馬鹿げた歴史的実験をやってきたのよね。ナチスは産んではならない人たちの断種をやる一方で、アーリア系の優秀な子供だけを囲い込む子供牧場も作ったし。

東&増原:ああ…。

上野:ヘテロなファミリーでは、男は父になるじゃない? だからそこにおいては、男が父になるってどういうことか、子供との個別的な関係をどうやって作っていけるのかということが、本当は男に問われているのよ。特に日本の男は、父親になることから逃げているから。学習してもらいたいと思っているのよ。

東:存在感の薄い父親って多いですもんね。

上野:そうよ、いないか、いたら暴君か。よく「男にしかできない子育てがある」とかいう人がいるけど、私はそんなのは絶対に信じない。マーサ・ファインマンという学者が、子育てには母にしかできない子育て、父にしかできない子育てというものはない、母業(マザーリング)しかないって断言している。

増原:性別も関係ないってことですね。

上野:そう。マザーリングをやらない男は、親になれないってきっぱりいっている。マザーリングとは何かといえば、子供と経験と時間を共にするということにつきるのよ。依存せずには生きていけない命がそこにあり、それを自分の人生の最優先課題にしなきゃいけない時に,その命と経験と時間を共にしない人は、男女を問わず「親」にはなれないの。だから日本に「父」なんていないわけよ。

東:ほとんどそうかもしれないですね。

上野:大きくなってから「オレの出番」といっても、取り返しがつかない。なにより子供はわかっているから、その年齢になるまでに、一番大事なことは父親に相談しなくなってるし、老後は見放される。いま、男たちを脅す時にどういうかって言うとね「家族に見捨てられてごらん、清原和博だよ」って言うのよ(笑)。あれだけのヒーローが、家族に見放されてあんなぼろぼろになるなんて、清原はいい反面教師よね。

東:よく異性婚と比較して「父がいない分をどう補うか?」とか聞かれるんですけど、実はあんまりぴんとこないんですよね。

上野:父にしかできない子育てなんかない、子育てにはマザーリングしかないって聞けば、それで大丈夫でしょ?

増原:そうですね。性別は関係ないということですし。

上野:マザーリングできる人をもっと増やしていけばいいのよ。男にもやってもらえればいいんだし。

増原:そうですよね!ほんとに面白い実験というか、実践ができればと思います。

■お祖母ちゃんの存在が夫婦をこわす?

上野:子育てに無能で非協力的な男が傍にいたって、かえってストレスの発生源になるだけだから、ゼロでなくて、マイナス。あなたたちのように女同士で子育てするのは理想的よね。実際、シングルマザーには「人持ち」が多くて、そうやって助け合って生きている。子供がひとりでは育たないことをよく知っているから。自分ちの鍵を何人もの友人預かってもらって、出入り自由な家庭を作ったり。日本で最強なのは、同じ女同士の組み合わせでも母と娘による子育てね。

東:それは、実母ですか?

上野:そう、実母の祖母力よ。シングルマザーの最強の応援団は実母だから。離別シングルマザーか非婚シングルマザーかは、妊娠が結婚の前か後かという順番の違いだけ。母親が一生懸命応援して育ててきたキャリアウーマンのような母娘関係の場合、結婚はいいから産むだけ産んじゃいなさい、私が育ててあげるからってことになる。結婚した娘でも、夫がストレスにしかならないなら、さっさと離婚しちゃいなさい、私がついていいるからと。実際、私の同世代の女たちは、今、孫育てに夢中よ。だから私は「あなたが介入すればするほど、娘の夫婦関係こわすよ」って彼女たちに言うのよ。だって、祖母力が介入すればするほど夫が手を抜くから。いつまでも妻と夫の間で親になるための交渉がはじまらなくて、そのツケが後で必ずくるよって。そうするとバアさんたちは、みんなドキッとした顔をするの。

増原:経験があるから頼りたくなるものの、それによってパートナーシップがどんどんとれなくなっていくという…。

上野:そんなこと、考えたこともなかったって。バアさんたちからしてみれば、娘からの要求に応えているわけだし、自分が必要とされることがうれしくてしょうがないの。その気持ちを抑制しようとするだけで、バアさんの側には努力が必要ね。

東:しかも問題が出てくるのは、しばらく先のことですからね。今は目の前で困っているという。

上野:そうなると、どこまでも男は手を抜く。バアさんが夫婦関係の破壊に無自覚に加担して、父にならない男を再生産していくの。エリートの夫たちは、大体そうね…でも、最近は男たちにも変化がでてきてはいるのよ。いままで男は生殖の責任から逃れるか、反対に権利主張するかしかしてこなかったのに対し、男性学の研究者が「男の生殖責任」を言い出すようになったのよ。もちろん圧倒的に少数だけれども。

増原:数は少なくても、いい傾向…ですよね?

上野:そう思う。男性学の研究者の男たちが、男の多様な経験を本音で発言するようになってきた。たとえば「避妊なきセックス」を性暴力扱いせよとか、望まない妊娠をさせた男を「強制妊娠罪」という罪にせよとかね。それに自分のセックスの相手に対するホンネを点検してみて、「避妊つきのセックスの場合は相手に対するリスペクトがあるけれども、避妊なしのセックスの場合はやり逃げという、女に対する軽蔑がある」とかね。そんなホンネを正直に言うのは良心的な男。普通はそんなこと反省すらしないわけだから。

東:たしかに、そうかもしれませんね。

上野:あなたたちの本も今日の話も、是非、男たちにすすめたいわ。母にだって学習しないとなれないのに、父に自動的になれるわけなんてないんだから。夫や父としての資格があるかどうかは、すごく簡単なテストがあるからすぐわかるわよ。「子供の友だちの名前を5人いえますか?」「妻の女友だちの名前を5人いえますか?」っていう質問してごらん。残念ながらほとんど答えられないよ、日本の男たちは。

東&増原:…ああ。

上野:男が妻や子供に関心がないのよ。つまり、家族に関心のない人と家族をやっているのよ。

東:ええええ!そんなのでいいんですか?!

増原:それでも日本は離婚率が低いし、それってお互い慣習で結婚して、関心もないけど耐えてるってことですよね…それって…。

上野:この先、この本に続編が出るでしょうけど、それって男にとってこわーい本なわけ。

増原:そうかもしれないですね。マイルドにみえて、実はそういう裏メッセージがあるという(笑)。

上野:こわいけれど「学んでほしい本」だということは、ちゃんと言いたいと思っているのよ。

■複雑化する女のいきづらさ

東:前に上野さんが雨宮まみさんの『女子をこじらせて』の解説に、上野さんの世代の女の生きづらさと、私や雨宮さん世代の女子の生きづらさには違いがあるんじゃないかって書いていらっしゃって。それはどういうことなのかお聞きしてみたかったんです。

上野:そうね、私たちの時代とあなたたちの時代が決定的に違うのは、私たちの時代には女に選択肢なんてなかったということ。そもそも「働いて生きる」なんて選択肢がなかったから。大学に行ったら最後、結婚もできないし、就職もできない。仕事をしても、結婚したら退職しか選択肢がないし、子供を産まないという選択肢もなかった。

東:じゃあ、やっぱり女性の生き方としては多様化してるんですね。

上野:でも、実は、選択肢が増えたように見えるだけ。本当に自由に選択しているかというと、決してそんなことはない。にも関わらず、自己責任・自己決定を迫られるつらさが、あなたたちの世代のつらさだと思う。

東:ああ、それが今の女子のつらさなんですね。

上野:だと思う。私たちの頃は、選択肢がないぶん、「自己決定・自己責任」なんて言われずにすんだもの。

増原:つまり生きづらさも複雑化していると。

上野:私たちのときは、みんな一斉に主婦になり、そのまま母になった。データでみると、23,4歳で結婚して、1年以内にほぼ9割が出産、35歳までに育児期を終えて早すぎる老後が始まってるのよ。ほかの生き方がないから、比べる相手がいない。でも、あなたたちには選択肢があるから、女性の生き方に多様性があるでしょ。だから比べる相手がいるし、むしろ比べる相手がいるだけ、キツくなってくるわよね。

東:確かにそうかもしれませんね。

増原:こうやって上野さんの時代について考えてみると、上野さんというのは本当にすごいことをされてきたわけですね。

上野:私は規格外の女だったわけ。なにせ結婚しなかった女は、私の同年齢人口においては3%くらいだもの。

東:3%…セクシュアルマイノリティよりマイノリティですね…。

上野:娘は25歳をすぎたら家にいられない時代よ。「あんたがいつまでも家にいると、お兄ちゃんが結婚できない」って。そのとき娘が家から出て行く先は結婚しか選択肢がないの。結婚が家から出るためのスプリングボードだったから、つまらない男にひっかかった娘たちは、私たちの時代にはたくさんいた。今は娘が親から「家から出て行け」と言われないだけ、ましね。

東:今は30歳のシングルの女性でも、普通に働いたりできますもんね。

上野:それだけ職業の機会が増えたのよ。とはいいながら『女たちのサバイバル作戦』に書いたけど、気がつけば働く女の6割が非正規雇用になってしまった。働いても食えないのよ。正規雇用のほうが少数派…なんでこうなっちゃったのか。もはや高齢者になってしまった私には、「こんな世の中に誰がした」と若い女性に責められたら、返す言葉がないんだけどね。

東:でも、昔よりは確実に変化してはいますよね。

上野:それはそう。だって45年経ったおかげで、あなたたちのような人が現れたものね。

増原:でも状況は変わっても、問題とされることの本質が変わらないという…。

上野:そうね、そう考えるとうんざりする。だけど、こういうテーマで公然と話ができる、しかもここにいるのは、編集者もライターもカメラさんもみ~んな女だし…仕事をするチームが全員女だなんて、こんなの、昔は考えられなかったから。

増原:それはやっぱり、上野さんたちの世代が言い続けてくださったからこそ、だと思うんですよ。

上野:そんな泣かせるようなこと言ってくれて、ありがとう。不甲斐ない先輩で、こんな世の中にしてごめんなさいって言うしかないんだけど。

増原:でも、私たちも気がついたら自分らしくいたいと思ったし、そういう発信ができる土壌があったというのは、そういうことなんだと思います。

東:私も上野さんのご著書を読んで育ってきましたし!

上野:ありがとう。あなたたちがロールモデルとしてすごくいいのは、深刻な顔をしてないことね。

増原:にこにこしてるってことでしょうか?

上野:それね、大事なことなの。ロールモデルって、がんばってるのとかしんどいっていうのとかを出しちゃうと、見てる方に嫌気がさす。できるだけ気楽に能天気な顔をしてたほうがいい。あんなに気楽にできるんだって伝わるのは、すごく大事なことよ。

増原:なるほど、そういっていただけるとうれしいね。ますますにこにこしないと(笑)

東:ほんとです! 今日は貴重なお話ありがとうございました。

取材・構成  荒井理恵

『女どうしで子どもを産むことにしました』

東小雪、増原裕子、すぎやまえみこ(漫画) KADOKAWA

TDL挙式で注目を集めたレズビアンカップル、小雪とひろこ。家族になったふたりは、もうひとり(ふたり?)「新しい家族」を迎え入れることを決めました。わからないことだらけの、女どうしの妊活がスタート!しかしその道は、イバラだらけでありまして……。新しい家族のカタチをもとめる女ふたりの道程を描くコミックエッセイ。
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