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2016年06月24日

高校生のセックスは不道徳で、妊娠は罪か。教育者が行うべきは、子供に罰を下すことなのか?

提供元: messy|メッシー

Photo by Kobayashi Mako from Flickr

高校生の「性」をめぐるニュースが続いています。一つ目は妊娠した女子高校生に学校側が持久走の実技を要求したという件。そしてもう一つは、セックスをしたからと退学させられた男子高校生の件です。

最初のニュースは、学校側が妊娠5カ月を過ぎていた3年生の女子生徒(18)に対して、体育の成績が「1」になると卒業できないなどとして体育実技を行うよう指導していた問題です。この女子生徒は、同級生と同じ時期に卒業したかったそうですが、結局、三学期から休学したそうです。

この高校の副校長は「全日制では学業と出産・子育ての両立は難しいと考え、休学し通信制に移るよう勧めた」と説明していますが、「体育ができないために卒業できない」ということならば、「他の生徒と同じように体育を行うことが困難な身体障害を持っている生徒は、普通科全日制には来るな」と言っているのと同じようなものです。ハンディキャップがあり、配慮が必要である人に「通常」の人と同じことを求めているわけです。そしてきっと、この学校の先生たちは、身体障害によって体育ができない生徒には、妊娠した女子生徒が課せられたような過酷な条件を求めることはなかったはずです。同じ「配慮が必要な生徒」であっても、「妊娠」だったからこそ非情な罰を下したのではないでしょうか。

高校生のセックスは罪?

現代の日本社会で、高校卒業資格が無いことは就職にも将来進学を希望した時にも、大変な苦労を味わうことを意味します。諸外国においても高校は義務教育であり、日本でも事実上、義務教育として扱われています。一般的に考えられる「最低限の教育」レベルを持っていない人は、社会経済的に大きなハンデを背負うことになります。教育者が優先すべきは、「休学しろ」「通信制に行け」「体育ができないなら卒業できない」と脅すのではなく、妊娠した女子生徒がいかに退学せずに、そのまま高校に在籍しながらほかの生徒たちとともに卒業することができるかを一緒に考えることでしょう。しかも、すでに高校3年生だった生徒にとって、卒業は目前だったのです。

アメリカでは、在学中の生徒が、妊娠や出産、産後ケアのために学校を「産休・育休」することは憲法で認められた権利であり、生徒たちがいつ学校に戻っても、妊娠・出産前のステータスに復帰でき、生徒たちの教育の権利を保障することは学校側に課せられた義務となっています。同時に、学校側は妊娠・出産のために欠席した授業を特別に補講するなどの努力もしなければなりません。

今回の件で、こうした配慮が行われなかったのは、教師たちが「妊娠はセックスした生徒の自己責任であり、私たちにお前を助ける必要はない。それどころか生徒は社会的に罰せられるべきである」という、生徒に懲罰を課すような考えをもっていたからではないでしょうか。

問題の根底には「交際相手と性行為をして退学させられた高校生」の件と共通する、セックスをタブーとみなす価値観があります。

ニュースによれば、彼は高校在学中に交際相手と性的行為をしたことを理由に退学を勧告され、転校を余儀なくされ、指定校推薦で進学が決まっていた大学からも合格を取り消されてしまったそうです。男子生徒(現在は大学生)は、この処分は社会通念上行き過ぎで違法だとして、学校と校長に損害賠償を求めて訴えを起こしました。

いずれの事件も根底にあるのは「高校生が性行為をすること」に対する、学校関係者の厳しい姿勢です。

必要なのは罰ではない

前述の男子高校生のケースでは、「高校生の分際でセックスしたお前は罰せられるべきだ」という学校側の態度がありありと見えます。

そもそも、「高校生のセックス」は禁忌なのでしょうか? あってはいけないことなのでしょうか?

今回のケースは両方とも対象は高校3年生、18歳の生徒でした。肉体的には十分に成熟しており、結婚もできる年齢であり、今年からは選挙権も与えられる、それが18歳です。精神的にも肉体的にも、大人として認められ、個人の決定が尊重されてしかるべき年齢なのです。

一番の問題は「高校生がセックスなんてありえない」という偏見によって、未来ある若者の将来をつぶすような罰を下したことです。

東京都の調査によれば、高校生男子の6割弱、女子の4割強が、自分自身が性交することについて、「愛情が深まれば可」「機会があれば可」「お互いが納得すれば可」など、許容的見解を示しています。そして、実際に性交経験がある生徒も08年度で3割、14年度で2割程度います。首都圏の高校生の半分は「セックスをしてみたい。してみてもいい」と思っていて、実際に経験している生徒も2割から3割はいるのですから、「高校生はセックスをしない」ことを前提にするのは、そもそも間違っているのです。

若ければ若いほど、必要な知識が不足していることなどによって避妊や性病予防に失敗する確率は高まります。「高校生はセックスをしない」という前提に立っていたら、不慮の妊娠や性病に罹患したとき、怒られること、罰されることを恐れて、親や教師に相談するタイミングを逸してしまいます。選択肢が無くなってしまうことはもちろん、最悪の場合には命さえ落としかねません。必要なことはセックスをしたことを罰するのではなく、その後に必要なケアを手厚くすること、そして望まない妊娠や性病にかからないように、正しい知識を与えるための性教育を充実させていくことです。

性をタブー視する社会

前回の記事でAV強制出演の件を取り上げましたが、メディアも弁護団の訴え方も根底には「セックスはいけないこと、けしからんこと」という考えがあるように思われます。AV業界の環境改善や女優・男優の地位向上ではなく、AV出演を「公衆道徳上有害な業務」と位置付けることで「セックスをすること」そのものを有害であると位置付けるような訴え方をしているからです。

高校生の性の問題にしても、AV強制出演にしても、セックスをタブーとする前提に立ってしまうと、もっと多様で深みのある議論の可能性を閉じてしまいます。何より、そうした性の問題が絡んでいる状況で、困った状況に陥ったとき、彼ら彼女らが助けを求めることが非常に困難になります。高校生のくせにセックスなんかするからだ、セックスを商売道具にするからだ、自業自得じゃないか、というような意見は、すべてその根底にある「セックスはいけないこと」という考えの発露です。

人間はセックスをするように造られているし、実際、ほとんどの人はセックスなくしてはこの世に生も受けていないでしょう。人の性を語ることは、生を語ることです。私たちはもっと性について快楽の視点からだけでなく、教育的な視点も含めてよりオープンに語るべきです。

参考資料
東京都幼・小・中・高・心性教育研究会、2014年12月「児童・生徒の性に関する調査」現代性教育研究ジャーナル45号
U.S. Department of Education, 2013, “Supporting the Academic Success of Pregnant and Parenting Students – Under Title IX of the Education Amendments of 1972”
交際相手と性的行為「退学勧告は違法」と提訴
妊娠中の女子高生に、持久走の実技を要求 京都の朱雀高校、休学勧めていた

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