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2016年10月08日

「男のくせに・ヒモ・穀潰し」の罵倒に立ち向かう。男性の家事育児参画を阻む障害を取り除くために/主婦の友アワード2016

提供元: messy|メッシー

主夫の友

 10月6日、日本財団にて、『主夫の友アワード2016』表彰式が開催された。これは父親の育児を支援するNPO「ファザーリング・ジャパン」内の組織である秘密結社・主夫の友が主催するもので、10月10日を「いい夫の日(1いい010おっと)」と定め、著名な主夫を表象する試みである。主夫の友の広報担当は、messyインタビューに登場してくれた兼業主夫・放送作家の杉山ジョージさんだ。

 今年の受賞者は、リオ五輪で活躍した男子卓球メダリストの水谷隼選手(27)をはじめ、宮崎県日南市の﨑田恭平市長(37)、直木賞作家の朱川湊人さん(53)、ママタレントの草分けSHEILAさんである。

 日南市の若きリーダー・崎田市長は、 5歳の長男、0歳の次男、妻と暮らす。今年2月、第二子誕生を機に、日南市における「ゆう」パパ運動の実施をスタートしている。「ゆう」パパ運動3か条、まず第一に市長自身がイクボスとして、「公務に支障の無い範囲内で、夕方から育児に参加する」。一週間の半分以上は夕方に帰宅し、長男を風呂に入れてからまた公務に戻るのだという。長男の幼稚園登園も、市長が出勤前に車で送り届けているそうだ。第二は、「市職員のパパも育児に参加します」。小さな子どもがいる家庭は、早く帰宅できるように仕事の仕方を工夫するよう通達しており、また、生後10週目までに5日間取得可能な「男性職員の育児参加休暇」制度を積極的に活用している。第三は、「市内で働くパパも育児に参加しましょう」。市内の各事業所にリーフレットを配布し、男性の育児参加の重要性理解を浸透させるとともに、育児休暇の取得を促進、時間をうまく確保して父親が育児に参加することを当然とみる社会の形成を試みている。

 崎田市長は「制度が変わっても、風土が変わらなければ、現実には何も変わらない」と考える。だからこそその風土を変えるべく、自分自身が積極的に育児に参加し、休日の公務には長男を連れて行くこともあるという。まとまった休暇はなく土日祝も関係ない市長職だが、今年の夏は、「海びらきの神事」出席にあわせて、長男を三回、海水浴に連れて行くことができたという。神事の際、海パン・浮き輪・ゴーグル姿で市長のスピーチ終了を今か今かと待ち望む長男の姿を、ほかの職員やスピーチ登壇者も笑いながら見守っていたというエピソードは非常に良いものだった。幼稚園登園や風呂でのコミュニケーションが増えたことで、長男はグッと「パパっ子」になったようで、そうなれば父親側としても育児が楽しくなる。また、市長は「夜にまた公務に戻らなければいけないとしても、夕方に子供と風呂に入ることがとても良いリフレッシュになっている」と、仕事にも好影響を与えていると明かした。日南市は、“いい夫の日”である10月10日よりLIONとともに夫婦円満都市推進プロジェクトも展開している。

 2005年に『花まんま』(文藝春秋)で直木賞を授賞した作家の朱川湊人さんは、今年5月に小説『主夫のトモロー』(NHK出版)を上梓した。タイトル通り、主夫男性の話である。朱川さん自身が、主夫として娘や息子の育児に深く関わった経験が生かされている。5歳の時に両親が離婚して以降、父と兄2人と生活していた朱川さんにとって、男性が家事育児をすることは何ら違和感のないものだったという。大学卒業後に就職するも、小説家の夢を追うべく27歳の時に退社、公務員の妻が働き自分は家で小説を書く生活を送り、誕生した娘・息子の育児もメインで担った。

 朱川さんの奥様は今回の授賞に際して「すごいね。そしたら、私は『すごくラクした奥さんアワード』をもらったりしない?」と笑ったという。受賞者のトークセッションで朱川さんは20年ほど前、まだ幼かった子供たちの世話をしていた頃を振り返り、「公園なんかに子供を連れて行くと周りの目がすごく厳しかった。ママ友ができて話しているだけで、変な勘繰りをされた。男がそういうことをやるとカッコ悪いとも言われて、風当たりが強く……男はやっぱり、ええかっこしたい人が多いから、それもまた障壁」と話した。そんな20年前と比べて最近は、「男だからこうだ/女だからこうだ」という性役割分担が柔軟になってきているように思う、という。「育児グッズも便利になった。今では雑巾も100均で購入できるから良くなった。僕の頃は、チクチク雑巾を手縫いした(笑)」。

 二児の母であるSHEILAさんの夫は一般人。第一子出産時から、「子供は(母親だけでなく)夫婦ふたりで育てるのが普通だよね」と意見が一致しており、積極的に家事育児を担当しているのだという。SHEILAさんは「夫の家事のやり方に雑だとか不満を抱く妻は多い。でも、いちいち口を出したらダメ。無理にホメなくていいから、夫が家事に慣れて習慣化するまで放っておいてあげて」とアドバイスした。

 司会を務めた白河桃子さんは、保育園の送迎をする父親がここ数年で飛躍的に増えた実感がある、と話した。筆者もそう思う。というのも、私の娘は現在5歳、保育園の年中組に通っているが、朝、父親が送り届ける家庭が半数ほどに増えた。娘が0歳児クラス~2歳児クラスあたりまでは、こんなに多くの父親の姿を見かけなかったのに……と思うと感慨深い。

 とはいえ、全国的に見てまだ育児参画する男性への偏見、男性自身の敬遠も払拭できているとは言い難い。男性の育児休暇取得率は、女性のそれがほぼ100%なのに比べて、1割にも満たない。政府が2020年までに女性の管理職3割という目標を掲げるならば、そのためには主夫男性も3割いなければいけないんじゃないか、というのが、秘密結社・主夫の友の主張である。現状、主婦・主夫という言葉には、収入がない、生活費を配偶者に依存する存在というイメージがある。主夫の友メンバーである男性たちは、「主夫です」と名乗ると、世間で偏見の目で見られ、変な人だと思われ、あげく職場で怒られてきたいう。男のくせに、穀潰し、ヒモ等の罵声を浴びせられる……さすがに面と向かってそんなことを言うとは冗談だろうと思うかもしれないが、事実、web上でも、男性タレントが「主夫」を公言すると、そうしたコメントを非常に数多く目にして暗澹たる気持ちになる。しかし彼らはヒモでも穀潰しでもない。家事育児に主体的に取り組む男性、というだけのことだ。

 秘密結社=公に主張が認められていない人たち。しかし杉山さんは自身の経験と重ね合わせて、「父親が子供と触れ合う時間は、きちんととるほうが良い」と考える。杉山さんのお父様は故人だが、今でも折に触れて「こういうとき、親父なら何て言うかな」とその存在に思いを馳せるという。そして杉山さんの二人の娘もまた、おそらく、「お父さんなら何て言うかな」と考える子供に育っていると自負している。家事育児に取り組み、子供と接する時間を多く持つことは、将来的にも子供の心に「お父さん」として確かな存在を残し、生きた証をつくることにつながると、杉山さんは語る。2017年には、より多くの男性がアワード候補になり、杉山さんらが選考に難儀するほど、「主夫」が増加することを望む。

(下戸山うさこ)

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