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2016年05月17日

育休をとった父親が家庭に与えうる影響 - 父親を巡る研究でわかること

提供元: マイナビニュース

●父親の育休取得に必要なこととその効果
父親の育児参加を支援するNPO法人ファザーリング・ジャパンはこのほど、「働き方改革! もう一度考えよう男性の育休のすべて」を開催。お茶の水女子大学 基幹研究院人間科学系所属、『「育メン」現象の社会学』の著者である石井クンツ昌子教授が、「父親が育児休業を取得する意義」について講演した。父親の育休取得には何が必要であり、取得の結果、家族にどのような影響をもたらすのか。石井教授をはじめ、国内外の研究者の調査結果をもとに語られた内容の一部をご紹介する。

○「なぜ父親が育児参加できたのか」に焦点

これまでの父親に関する研究は、父親が育児参加や家事参加を「なぜしないのか」というものが多かったように思います。しかし、育児参加・家事参加ができた父親は何が違うのかということにもっと焦点をあてるべきだと考えています。そこで私は、育児休業(育児を目的とした有給休暇なども含む)を取得した父親たちの研究をしました。今までそのような研究が少なかったというのもありますが、どうやって取ったのかを知りたかったからです。

結果として育休を取れる要因としては特に「職場環境と慣行」があげられるかと思います。それから「周囲の理解とサポート」。家族だけでなく職場によるものも大切です。さらにロールモデルがいるかどうか。私は「パーツモデル」と呼んでいますが、育児参加をしているという部分においてモデルになる人が日本には少ないので、企業に育休を取得した父親が1人でもいたら、それはパーツモデルになり得ます。

それから、経済的サポートも必要です。日本では育児休業給付金が100%出ないからです。また、立ち会い出産も効果があります。アメリカの研究によれば、立ち会い出産をした父親は育児参加が多くなることがわかっています。育児参加が多くなるということは、育休を取得する確率も高くなるでしょう。

○父親の育休が子どもにもたらすもの

父親の育休取得が家族にどのような影響を及ぼすのかについても、これまでの国内外の研究結果をもとに考えてみましょう。今回、父親が育休を取得するということは、育児参加の確率を増やすのではないかと想定し、育児参加の多い父親が家族に及ぼす影響をみます。育休取得についての研究は非常に少ないからです。

アメリカで行われた縦断的な調査で、子どもが5歳の時点で父親の育児参加が多かった場合、30年後「成人後の自尊心、学業達成レベル、人生に対する満足感がアップする」という研究報告があります。もちろん、この結果の背景にはいろいろな要因があると思いますが、特に際立っていたのが「父親の育児参加」だったのです。

●「夫婦間の幸福につながる」という研究結果はない!?

○妻のキャリアや夫婦関係にも影響

次に妻への影響を見てみると、「育児不安・育児ストレスの軽減」があります。これにより、妻の養育態度がポジティブになるということもわかっています。キャリアについては、夫の労働時間が長いと、妻の労働力率が低下し、継続就業を断念させる効果があります。

反対に、夫が早く帰宅し、家事に参加すれば、妻の正規就業を促進します。一方で好影響ばかりではなくて、夫が育休を取得することで、夫の収入やキャリアはどうなるのかという不安を抱くという側面もあります。

夫婦関係でもコミュニケーション頻度が高くなったり、協働関係が増えたりといった効果があります(ただし、コミュニケーション頻度が高いから育休を取得したのか、育休取得したからコミュニケーション頻度が増えたのかはわからない)。しかしここで注意しなくてはならないのは、お互いに「ハッピーになっているか」と言えば、微妙だということです。

例えばコミュニケーションを取る中で、妻が家事・育児の指示をすることで、不満を感じる夫も多いからです。日本人はあまり夫婦間の幸福や愛情について考えていないのかなと思っています。そのようなバックグラウンドがないので、父親の育児参加が多いことが夫婦間の幸福に直接つながるといえる研究はありません。

○育休は自分のキャリアの一環

父親自身に対してももちろん影響があります。育休を取得した父親は同情心が強くなったとか、自分のやっていることに誇りを持てたとか、感謝の心が増えたと言っています。子育てをすることによって自分が成長したとも感じています。ほかにも父親たちの語りとして、「思いやりが深まった」「他人に迷惑をかけないように心がけるようになった」「物事に対する考え方が柔軟になった」「人間関係が広がった」「仕事に対する意欲がわいた」という声が聞かれました。もちろん父親も、育児不安や育児ストレスを抱えます。しかし反対に、育児に喜びを感じているという人も多いです。

職場に対する影響もあるようです。「同僚に感謝する気持ちが強くなった」「全てにおいて柔軟な考え方ができるようになった」という声があるほか、仕事のやり方も変化しています。私の研究では、段取りの重要性を認識し、時間のマネジメントができるようになったという効果がわかりました。育児期の社員への理解が深まるというのも、他の社員への好影響といえます。「育休も自分のキャリアの一環」と考える父親もいました。

研究者なので客観的に研究をしているわけですが、さまざまなポジティブな結果が得られています。子ども、妻、夫婦間、父親自身、職場に対してのポジティブな影響を考えれば、父親の育休取得は「Win-Win」どころか「Winの5乗」と言えるのではないでしょうか。
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