camilyを便利に使おう

3つの質問に答えて、
自分にあった記事リストにしよう

会員登録はいりません

  • 1
  • 2
  • 3

2016年08月10日

「仕事も子育ても」という当たり前の願いをかなえたい!出産後に復職したい女性と女性に働き続けてほしい企業、双方を支援するNPO代表

提供元: laxic

「仕事も子育ても」という当たり前の願いをかなえたい!出産後に復職したい女性と女性に働き続けてほしい企業、双方を支援するNPO代表

自分で組織を立ち上げるという決心した大学時代

人事畑の経験を積んだ新卒時代

堀江さんと娘さま

ラシク編集長・宮﨑(以下・宮﨑):『Arrow Arrow』立ち上げ前は、どのようなお仕事を経てこられたのですか?

堀江さん(以下敬称略、堀江):独立して仕事をすると決めたのは、大学3年の時なんです。就職氷河期のラスト年と言われていて、私は大学院に進むかどうか迷っていたのですが、一応、就活もしようかなと。

そんな時、第1志望の企業から内定をもらった親友が、「内定をもらったけれど、子どもができたら仕事を辞めなければいけないような会社だから、やめる」と言ったんです。それを聞いた時、私は全然理解できずに「せっかく内定をもらったのに、まだ分からない未来のために諦めるの!?」と、半ばケンカを売ってしまったんですね。少し落ち着いてから「なんでそんなことを言ったんだろう?」と思い、女性が働き続けるということについて色々勉強してみたんです。そして、自分が思っていたよりも女性が働きづらい、生きづらい厳しい環境であることが、数値でもエピソードでもたくさん出てきて。「仕事と結婚・子育てが両立できる社会を作っていくために、いつか私が働きやすい職場を作ろう」と思ったんです。とはいえ、当時は、具体的な事業計画があったわけではないんですけどね。

宮﨑:新卒で就職されたのはどのような会社ですか?

堀江:いずれ組織を作るという思いを軸に就職活動を進め、ベンチャーだった人材企業に就職を決めました。私は企業を選ぶ上で、「女性管理職がいる」、「無形商材を扱う企業」で、「苦手な営業をやりたい」という視点で絞っていきました。内定をもらってからは、在学中に就職支援のNPOの活動にも携わっていました。

そして総合職で入社し、当時その会社にまだなかった人事部の立ち上げに、4人のメンバーのうち紅一点として携わることになりました。社長直属の組織で、「成果を出せるメンバーを育てる人事部になる」ということが命題。新卒採用を担当し4人という少ない人数でたくさんのプロジェクトを経験したので、本当に勉強になりました。一方で人材業界にいると、子育て中の女性だと紹介できる企業が限られることを目の当たりにし、それが当たり前のようになっていることにも違和感を感じました。仕事には充実感を感じながらも、そのあたりにモヤモヤしたものを感じていました。

病児保育の『フローレンス』駒崎弘樹さんとの出会い
自分の目指す方向も再認識

宮﨑:その後、フローレンスとの出会いがあるのですね。

堀江:3年目に、人事部から人材紹介のグループ会社に異動になり、キャリアコンサルタントとして仕事をしていました。その頃、病児保育のNPO法人『フローレンス』の代表、駒崎弘樹さんのインタビューをたまたま読んだんです。20代・独身の男性が、女性の仕事と育児の両立支援に取り組んでいて、「私がやろうと思っていたことを、何でこの人がやってるの!?」と最初はむかついたんですよ(笑)。そして駒崎さんのことをネットで調べて色々読めば読むほど共感することが多くて。フローレンスがボランティアスタッフを募集していたので、履歴書を持って駒崎さんのところに行き、「ボランティアでいいから働かせてください」とお願いしたんです。しかし、当時長時間労働をしていた私のどこにボランティアをする時間があるのかと(笑)。そして駒崎さんは「ワークライフ・バランスのコンサルティング事業を始めるから、人事の仕事経験がある人を採用しようと思っていたんだ」と、採用を決めてくださいました。フローレンスとはこんな劇的な出会いでしたね。

宮﨑:まだフローレンスも初期のころですね。

堀江:当時のフローレンスは、スタッフが10~15人ぐらい。マンションの1室で仕事していました。病児保育のコーディネートを朝夜両方担当する時は、借り上げのマンションに泊まっていましたね。週50時間は残業があったのではという状況でした。しかし、フローレンスは、ここから残業削減に舵を切るんです。駒崎さんが「僕たち弱小NPOにできることは、企業にもできるはず。僕たちがまずやろう」と。月10時間ほどの残業に抑える努力をしたんです。1日換算にすると15分あるかないかですね。それまでのフローレンスは、子育て世代より上か、結婚していない若い世代のスタッフが多かったのですが、残業削減が実現したら、色々なキャリアやスキルを持つママたちがたくさん応募してくれるようになったんです。スタッフの年齢層に幅が出ました。

しかしあくまでもフローレンスは、「女性の仕事と育児の両立支援」。私が目指すのは「両立できるのか悩んでいる人に手を差し伸べたい」という点。フローレンスで働いて3年目にこの点について駒崎さんに相談したところ、「信念を貫いてやってみることが大事。ダメだったら戻ってくればいい」と背中を押していただきました。

2010年6月末にフローレンスを退職し、任意団体として「Arrow Arrow」を立ち上げ、約1年後に法人登記しました。この頃結婚もして、人生の大きな転機でしたね。

1人で『Arrow Arrow』を立ち上げ

大きな仕事の1つ目は中小企業の産育休取得プロジェクト支援

Arrow Arrow5周年イベントの様子

宮﨑:いよいよ組織を立ち上げられたのですね。

堀江:立ち上げ後最初に手がけたのは、中小企業の女性の産育休取得プロジェクト。新卒で就職した人材会社の人事部の上司の紹介を経て、その会社のグループ会社の女性の産育休取得プロジェクトを担当させていただきました。中小企業を選んだのにも理由があります。私自身がベンシャー出身なので、「中小企業が変われないと世の中は変われない」という思いがありました。また、中小企業が切実にワークライフ・バランスを考えるのは、女性社員が妊娠したとき。人数が少ない職場ですから「抜けられたらつらい」という思いがある。そんな中小企業の課題が顕在するところを狙おうと思いました。どの職種でも復帰できるような職場環境を作ることで、女性も安心して産育休を取れ、会社も「いつライフイベントを迎えてもOKだよ」と言えるような、そういう会社を増やしていきたいと思ったんです。

宮﨑:産育休プロジェクトは、具体的にどんなことをするのですか?

堀江:まずは対象社員の業務の洗い出しです。コア業務を見極め、そこに集中できる働き方ができるように調整していく。妊娠中・子育て中は外回りが多い業務が厳しい場合もあるので、社内・社外にいる割合を考えて、それ以外の社員にも負担がかからないように、業務をパズルのように分配していきます。思い切って仕事を見直して削ってもらうこともあります。

他の女性社員にも働く環境についてインタビューをし、潜在離職率を出して管理職に見せて共有し、対策を練ったりもします。また、初めて産育休を取る女性社員の場合、どうしても視野が限られてしまって目の前のことを不安に思う気持ちが強くなるので、例えば、「今の子どもが小さい時の状態ずっと仕事も続くわけではない。子どもの成長によって自分自身の環境も様々に変化する」ということを含め、中長期的な見通しを立ててアドバイスをしていきます。そこから、Arrow Arrowの事業である個人講座とか生き方デザイン学というところにもつながっていくんですが、女性自身が自分の選択肢の幅を広げる力を持つことが大事だなと思って活動しています。

宮﨑:「他の社員の負担にならないように」というのが産育休、子育て中の社員の働き方に関する難しい点ですね。

堀江:企業との交渉というと非常に大きなものを相手にしているようですが、自分が組織の中で実際に接するのは「人」。そこにコミュニケーションミスが起きないようにすることが非常に大きな課題ですね。

私はフローレンスで働いていたころは独身で、他の社員の妊娠・出産も見てきました。社員が3人同時に2人目を妊娠するという事もあったんですね。そんな時、同僚たちが「今は子育て中で、負担をかけるかもしれないけれども、その分堀江さんがライフイベントを迎える時にはきちんと返すから」と言ってくれたことがすごく印象に残っています。自分にとっても成長の機会だと思いました。権利主張をしすぎないよう、迎合しすぎないよう、当事者の女性とそれ以外の社員の人たち、どっちかの味方に偏らないようにという部分は、とても気を遣いますね。権利はとても大切なんですが、それを「どうぞ気にしないで使って」と言ってくれるのも人ですしね。

1度退職するとなかなか仕事に就けないのはおかしい

ママと企業のマッチングを図る「ママインターン」を開始

名古屋でのママインターン・ワークショップの様子

宮﨑:その後に、ママインターンの事業を始められたのですね。

堀江:悩んで決断して1回は退職しても、後々やっぱり「辞めなければよかった」「再び働きたい」と思うことって往々にしてありますよね。でも今の社会は、いったんレールからはずれるとアウトという感じ。色々なキャリアやスキルを持っていても働けない状況にある人たちがたくさんいることに、すごく疑問を持ちました。

それから東日本大震災があって……。私は独立したてのころで家にいる時間も長かったのですが、外に働きに出ている子育て中の方々の中には、子どもと長く離れることへの不安や、通勤に時間をかけたくないと思う人も増えてきていましたね。そんな中、自分が住んでいる地域にも、面白いことをやっている会社やNPOがたくさんあり、その人たちは人が足りなくて困っていることに目が向きました。優秀な方たちは地域にたくさんいるんだから、そこをマッチングしてあげられないかなと。お仕事紹介できないかな、必要であればコンサルティングもできるし、と。

そして、杉並区で子育て中のママにNPOの仕事を体験してもらう事業に取り組んだのが、「ママインターン」の始まりです。その後自分が住む国分寺で実践し、お隣の府中でもという感じで少しずつ実績を重ねました。そうするうちに、現在『ママインターンプロジェクト』を支援してくれているJPモルガン・チェース財団の目に留まって「全国でやってみないか」という申し出をいただき、現在は全国6地域で実施しています(東京都世田谷区、宮城県名取市、群馬県高崎市、静岡県三島市、愛知県名古屋市。『ママインターンプロジェクト』はJPモルガン・チェース財団がプロジェクト支援のもと、Arrow Arrowが6地域の事業の責任者、日本財団がプロジェクトの取りまとめを担っています)。

宮﨑:インターンの期間は無給ですか。

堀江:そうです。大体1ヵ月の間に4~6日仕事を体験していただき、マッチングがうまくいけば採用に至ります。採用率は国分寺では30%程度、その他の地域はもっと高いですね。

宮﨑:ママ側と企業側に、どのようなメリットがありますか?

堀江:ママにとっては、仕事の内容はもちろんですが、それ以上に「自分の働き方を理解してもらえるかどうか」が重要なんです。再就職を希望するママの多くは、できることはたくさんあるのに、自分が何によって会社に貢献できるかもつかめていなかったりします。そこを整理したり、理解のある企業さんがたくさんありますよとお伝えすることで、「やってみよう」と意欲がわく方も多いですね。

企業にとっては、短い時間でもやれることが決まっている企業などは、スムーズに導入を決めてくださいますね。あと私も経営者になってから痛感しているんですが、今の労働法は、1回雇用するとどんな労働形態でも、雇用者より労働者が優位に立つ仕組みになっているので、採用に慎重にならざるをえないんですね。でもママインターンは、その間の費用もかからず、ママ・企業のお互いにとってのお試し期間。どちらにもイニシアチブが働くわけではないというのは、気軽に利用しやすいみたいですね。

出産・育児によるブランクをどうとらえる?

復職への第一歩で一番大切なことは……

宮﨑:どのぐらいのブランクを経て再就職の相談に来られる方が多いですか?スムーズに復帰するには、ブランクはあまりない方がよいのでしょうか?

堀江:色々なケースがありますが……。5年ぐらいたって、一番小さいお子さんが少し手が離れて、という方も多いですかね。ブランクの期間は、あまり関係ないかもしれません。それよりも、自分が最終的にどうしたいかをよく考えて、腹を据えられるかどうかではないかと思います。働くんだという覚悟ができれば、今までもやもやしていた「悩み」は「課題」となり、自分で解決策を探すようになるんですね。仕事でも育児家事でも、自分が今までやってきたことは全てスキルになると、自信を持って進んでほしいです。

「この社会に生まれてきてよかった」と子どもたちが思えるように

色々な生き方を選べるということを大人が示していきたい

堀江さんとご主人、娘さま

宮﨑:堀江さんご自身の子育てについても伺わせてください。両立支援にずっと取り組まれてきましたが、ご自身が出産されて、実際はどうでしたか?

堀江:2014年11月に女の子を出産しました。翌年の1月から3月はファミリーサポートやベビーシッターを利用して仕事を少しずつ再開し、保育園に入れた4月からフルで復帰しました。仕事を早く再開したいという気持ちも強かったですね。最初は、自分がいなきゃ会社はどうなるの?と思っていましたが、他のメンバーでできることがわかり、おごっていたことにも気づきました。そして「やらない仕事」を決めていく重要さも痛感しました。ちょうど自分がコンサルでアドバイスしていたことを、実感した感じですね。

私は結婚3年目に不妊治療を始めたのですが、治療をすることを決める時も悩みましたし、仕事と治療の両立の難しさも感じました。事業を畳もうかと考えたことさえあります。色々な方に相談し、「あなただけの組織じゃない」とも言っていただき、自分が辞めなくても続けられる方法を模索しました。仲間にはたくさん助けられました。自分の産後も、友人たちが30人ぐらい入れ代わり立ち代わりサポートに来てくれて、「弱っているときに弱っていると言える相手がいること」の大切さ、ありがたさが身に染みました。

宮﨑:ご夫婦(ご主人は、家事シェアを伝える活動をする「NPO法人tadaima」代表・三木智有さん)の協力体制はどのような感じですか?

堀江:18時には2人とも家にいるようにしています。そこから21:00に娘を寝かしつけるまで、2人体制なので、育児についてはリズムができているんですが、私の家事スキルが低いので、夫が不満じゃないかなーと不安になることはありますね。それに対して夫がうるさく言うということはないのですが、娘には、やるべき家事をちゃんとやっている自分の背中も見せたい(笑)。夫婦お互い無理せずに手を抜くところは抜いて笑顔でいることと、やるべきことをやることの、バランスが大事かなと私は思っています。

夫に対しては、権限委譲した家事に対しては、文句は言いません。私も口出されたらいやですからね(笑)。もちろん、夫婦なので時にはムカッとくることもありますが、感情的にならずに飲み込んで、話し合うようにしています。私は独身時代にルームシェアでの生活を体験しているので、それも影響しているかもしれません。

宮崎:今後、Arrow Arrowはどのように進化していくのでしょうか。

堀江:社会を変えていくという壮大になってしまいますが、娘が大きくなったときに、自分と同じような葛藤は味わって欲しくないですね。この社会に生まれてきてよかった、色々な選択肢があって努力すれば進みたい道に進めるんだ、と思えるよう、大人たちが示していきたいですね。そのために着実に歩を進めていきたいです。

他の記事を読む

子育ての記事

    ©camily 働くママとパパの仕事と育児をもっと自由に